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みっける探偵FILE〈その9〉 ──みっけるだけが、人生だ

みっける探偵FILE

2018.03.17

ガラガラガラガラガラガラ……

 

その日の世田谷三軒茶屋キャロットタワー、生活工房のフロアには、

耳をつんざく雷鳴のようなものが行き来した。

 

こめかみの奥にさしこんでいく、「雷鳴」。

その正体は、高さ3.5メートルの巨大な可動壁を転がしていく音だった。

 

『みっける365日』の成果を広く御覧に入れるための、大展覧会が、すぐだった。

 

1月13日(土)『みっける365日』ゼミ最終回 

晴れ、7℃

 

「さあそれでは、ゼミごとに展示場所をみっけましょう」

 

どんどん新しく手作りされる会場模型を、お盆のように抱いた北川貴好が号令する。

『みっける365日』ゼミ、最終回。全体としての、本当の本当のラスト活動。

展示プランを胸にいだくゼミ生それぞれが図面を握り、

ワークショップルームを飛び出していく。

 

 

探偵には、このアクションの中でみっけたことがある。

 

会場プランニングのため、日を替え、幾度もたんねんに繰り返されてきた、可動壁の仮置き。

人の力でガラガラガラ……と地鳴りを起こしながらそびえ立つ、一枚ずつの「壁」が、

ただ空っぽな、白くて広かっただけの空間を、とてもマジカルな「部屋」に変えるのだと。

 

前回までの各ゼミの意向を汲んで、北川貴好が練りあげた設計図と、会場プラン。

ことばによってプレゼンされた各ゼミのテーマを、立体的な展示空間の構成に化けさせる。

さかのぼるのなら。それは、「ことばが立体に変わる瞬間」だった。

 

 

限りある空間面積や、可動壁の数、ゼミの人数、テーマ性、プラン、明暗、動線、ドキドキ。

多くのファクター目的を併存させつつ、究極的には展示作品に関心を集中させる「縁の下」。

それが会場プランニングというものではないか──

 

「別フロアからは雷が落ちたみたいに聞こえるんですよ」と生活工房のサトウ氏が語る、

ひっきりなしのガラガラガラ……の嵐のなか。

立体化されてゆく展覧会を、確かなバイブスとして感じたのは、

みっける探偵のわたしも、ゼミ生たちと同じかもしれない。

 

探偵は、北川貴好の模型と現場テストに随行し、その詳細を調査した。

そして──。

現場を調査した結果、「北川の企図したであろう会場プラン」を、以下のように解釈する。

前回の報告書に記載した、各アーティストの発言と対照していただきたい。

 

北川貴好ゼミの会場プラン


 


核となるテーマは、シェアハウス。ゼミ生5部屋となる同面積の隣り合わせ空間を、

建て込みの段ボール壁と梁、屋根で構成していく。キッチン、廊下をコモンスペースに。

 

青山悟ゼミの会場プラン


 


ゼミ生それぞれの個人性を尊重する「一人一ブース」。

ねらいは「みっける」方式を、どストレートに表現すること。大きな壁面を一人ずつに。

 

キュンチョメゼミの会場プラン


 

空間のスキマや暗所を積極的にガンガン使っていく。

ゼミ生の個性と方針の尖りかたを発揮させる、大胆でいて遊びを感じさせる空間使い。

 

タノタイガゼミの会場プラン


 


テーマは「みんなのリビングルーム」。

ゼミ生4人には、目に見える仕切りが不要。包みこむような広々とした空間。

求心的なワンルーム、ひとつ空間の要所ずつをゼミ生それぞれが担当していく。

 

ゼミ生それぞれ、アーティストそれぞれが現場をテストした結果、模型もどんどん変化する。

立体視された展示空間を実感したゼミ生たちが、ずるっと真剣なまなざしに変化する。

残された時間で制作や展示方法について、主体的に問うていく。

 

もうゼミ活動としての時間はない。最終回だ。

ここからは個人の制作に移り、設営、搬入、と現実のカレンダーが進んでいく。

 

どうしたことだろう、探偵は。

最終回のこの日。「閉じる」「終わる」はずの最終回に。

おびただしい数の「起立するもの」「始まるもの」をみっけていた。

 

 

 

「嬉しいんですよね、なんか、人生って感じがして」

「ああ、始まるんだな~、って」

 

ゼミ生の声がした。

                                                          

空間が起立した。

ゼミ生の出展者としてのリアリティが起立した。

ゼミ生が作家としての覚悟を抱くさまが起立した。

アーティストたちの、構成者としての役割が起立した。

 

そして、かかわるすべての人々の心意気のようなものが、起立したのだと思えている。

最終回に起立するもの。それは、ほら貝をふく出陣式のようなものだった。

 

『みっける365日』ゼミ、最終回。

 

終わりこそが、その始まり。

 

 

※  このお話は実話を基にしたフィクションです。

 

 

【著者略歴】

森田幸江(もりたゆきえ)

アメリカ大使館ライター、学芸単行本、カルチャー系雑誌編集、電子書籍シリーズ編集などに従事するフリーランス著述者/編集者。コミック原作、小説、取材構成などの打席にも立つ。1979年生まれ、日本女子大学文学部卒、右投げ右打ち、贔屓球団は広島東洋カープ(年間40試合を現地観戦)。

「みっける365日」展──アーティストと探す「人生の1%」
http://www.setagaya-ldc.net/program/393/

Program プログラム

2018.07.24~2018.08.19

世田谷アートフリマvol.30出展者募集

みっける探偵FILE〈その9〉 ──みっけるだけが、人生だ

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