写真:矢郷桃

この展覧会では、世田谷区内の住宅街で400年続いている大平農園の歴史や地域の農業の歴史、畑の土壌の微生物・野菜・人間の円環などを紹介しています。

 

 

こちらのパネルでは、地域の農業の歴史をふりかえります。世田谷区の農地面積は、今でも23区内で練馬区に次いで2番目の大きさです。また、江戸時代の世田谷は大消費地「江戸」の近郊にある農村として、江戸町民たちに様々な農産物を供給していたこと。徐々に住宅地へと変貌していったこと。これまで知らなかった世田谷の一面を写真とともに知ることができます。

 

 

終戦の食料困難・食料増産のための活動やいち早く取り組んだビニール栽培、農薬による健康被害を受けて11代目大平博四氏がはじめた「農薬を使わない農法」への大転換など、400年の絶え間ない努力を感じます。

 

 写真:矢郷桃

土壌の科学のコーナーでは、畑の土壌の微生物・野菜・動物・人間の円環を、イラストレーターの伊藤ハムスター氏のイラストで表情豊かにご紹介。キノコ、カビ、太陽などの土壌を育むために大切な役割だけでなく、会場では植物を病気にする疫病菌についても楽しく学べます。 会場内では大平農園が屋敷のケヤキの落ち葉から手作りする肥料の実物資料も展示。肥料作りの期間はなんと5年間!土づくりの大変さとともに情熱が伝わってくるようです。

 

最後に「若葉会」の活動コーナーについてご紹介します。「若葉会」とは大平農園と志をともにする他県の農家、それを支持する消費者からなる組織です。 私が特に印象に残っているのは会員向けに毎月発行しているニュースレター「若葉会ニュース」です。本展では1984~1996年の号を抜粋して展示しています。

 

 

ニュースレターでは園主の大平さんの話や畑の状況、他の生産地訪問について手づくり感あふれまとめられています。

内容は明るい便りだけでなく、「今年は不作です」などの言葉もあり、毎年同じように農作物が育つわけではないという苦悩も垣間見えます。

 

 

他にも現若葉会メンバーのインタビューや旬の野菜を長くおいしく楽しむ知恵やレシピを載せた「畑のレシピ帖」も公開。会場内ではプリントで配布中ですので、若葉会の味を自宅に持ち帰れます。

 

展覧会から普段、何気なく食べている野菜は畑の土の中での様々なできごとを通して、育ち、出荷され、食卓に並んでいることに改めて気付かされました。口にしているものがどう育ってきたか気に留めることなく、食事をしていることもしばしばありますが、「大平農園と畑のレシピ帖展」をきっかけに食べ物とじっくりと向き合う時間をもちたくなりました。

 

展覧会は6月27日まで開催しています。ご来館をお待ちしています!