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レポート | 観る、やってみる、問いつづける。映像のフィールドワーク展 | 世田谷文化生活情報センター 生活工房

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観る、やってみる、問いつづける。
映像のフィールドワーク展

20世紀の映像百科事典をひらく

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「自分の探求した楽しみを、みんなで共有する」工夫とは?

さっそく会場を見ていきましょうね。この辺りは最も風変わりな場所ですね。ここは寝転がってでも映像を自由に観られるテントです。

クラゲの映像とか、透けた布に幾重にも映った姿がピューって昇っていく群のただ中に自分も入ってしまったみたいな気分になります。

いま映っている映像は変形菌といって、植物なのか動物なのか分からない不思議な生き物です。それが変化して子実体というものになります。動物の映像、特にこんな風にすれば生き物の躍動みたいなのを感じられて面白いんではないかと思いました。

昨日はお母さんが授乳をしながら観ていました。映像との距離が絶妙なんです。

こちらのスクリーンでは、各地のひもづくりに関する映像がたくさん流れています。映像に共通しているのは、その場にあるものでひもをつくっていることです。リュウゼツランしか生えていなければリュウゼツランで、ヤシの実しかなければヤシの実でつくるんです。では改めて私たちの暮らしで身近にあって、お金を払わずに手に入るものは何だろう、と考えるとトウモロコシの外側の葉が浮かびました。普段はスーパーなどで捨てられているものです。それを晴れた日にもらってきて干して、他の人にも協力いただいてこんなに集まりました。それが見事にひもになるんです。こんなに細い繊維でも、それが撚り合わさることで強度が生まれます。身近なものでやった方が分かりやすいですね。羊毛だったりすると、あまり羊を飼っている人がいないからイメージが難しいですが、トウモロコシはみんなよく食べるし、この近くにも畑があったりしますよね。

この場で誰かがつくったひもが天井からぶらさがっているんですが、これどうやってつくったんだろうって思いますよね。各々が手を動かしながら、映像を観ているんです。テレビの前や映画館などで映像を観るのとは異なる、立体的な体験です。

あと「フィールドノート」と呼んでいるこのノートを、参加者に手渡しています。

映像を観ながら、つくってみたことや発見したこと、疑問に思ったことをこれに書き留めてもらい、その紙を壁に貼っていくんです。自分の気づき探求した楽しみが、みんなと共有されていく場。前日に来た人、前々日に来た人たちの体験が、伝言されて、共有されていく仕組みです。

つまり、昔あった伝言板のような役割ですね。
みなさんの書いてくれたフィールドノートは毎日この壁に貼られ、まるで粘菌のように拡がっていき、最後には世界地図のようになりました。

レシピはなく、映像から手さぐりして料理をしてみる

この会場では、毎日のように映像を観てつくったり演奏したりする「ECラボラトリーズ!」というイベントをやっています。そこでつくったものも、こうやって会場に痕跡として残しています。あやとりも残しているし、そちらはみんなでつくったいろいろな仮面です。仮面づくりもみんな真剣で、あまりに面白いので、仮面を被ったまま外にパレードへ出掛けました(笑)。

あそこに干してある浴衣も、洗濯のワークショップで洗ったものです。おじさんが足踏みしながら洗濯をしているアフガニスタンの映像や、ルーマニアのぐるぐる洗濯機みたいな水車で洗濯する映像をみんなで観たんです。洗濯なんて日常のよく知っていることも、じっくり観ると発見がある。昭和のくらし博物館の方をお呼びして、昭和のお婆ちゃんの洗濯の映像も観て、タライや洗濯板を使い、ムクロジなどの実で洗う実験をしました。

こちらのキッチンの中には、食べ物をつくる映像があります。ルーマニアのママリガという料理とコロンビアのマニオクの平パンを、映像を観ながらつくるワークショップもやってみました。参加者から出た感想として「普通、料理のレシピがあってそのレシピ通りにやるけれど、こんな実験みたいな料理は初めて。粉を練るだけなのに、どのぐらいの火力と時間、水分量が必要かを、大人も子どもも手さぐりしていくようなことは初めての体験だった」と。

この杵と臼がある場所は、子どもたちのお気に入りの場所になりました。みんなここで杵をついて、トウモロコシを粉にしていきます。粉作りはやってみると難しいんですが、どこからか杵つきの音が音楽やリズムになっていくような感覚です。暮らしの中から音楽が立ち上がる瞬間かもしれません。

どんどん生まれる映像アーカイブ活用のアイディア

今回、デジタル化されているECフィルムが600タイトル全部検索して見られる、ということもあって、関西や北海道といった地域からも来場者がありました。

いうなれば、ここは研究所内の研究室。面白かったのは、誰かが検索をして2人ぐらいで見ているうちに、いつの間にか知らない人が5、6人輪になって、30分近い映像をみんなでああでもない、こうでもないと語り合うような状況が自然に生まれていました。

この展示自体が非常に実験的なものだったので、映像アーカイブの活用が課題とされる昨今、そこに興味を持って来場される方も多くいました。

これまで地方では、その地域の映像とECフィルムを組み合わせて、みんなで対話する上映会を企画してきました。例えば福島の一部の地域では、食用の農作物がつくれなくなってしまった状況で、藍染の原料となる藍を育てて、放射性物質を除去する試みを行っている方などもいらっしゃいます。そこに関わる村の人たちと、ヨーロッパの藍染の映像やモノづくりを行う映像を観ながら、対話を生み出したりしています。地方の図書館でもECフィルムを鑑賞できる機会を提供していますが、今回の展覧会を通じて、こういう使い方がしたいというアイディアがどんどん生まれてきて、これからの活動がさらに広がっていくきっかけになりました。

クラシー
電気がなくて洗濯、ガスがなくて料理…。大変そうだけど、昔の人はあたり前にやってたんだなあ。
カワルン
ぼくたちが住んでいる生活工房のキッチンも家電がいっぱいだけど、電気がなくても生きていく知恵、見習いたいね!