ほんの30年前まで日本の印刷の主流を担っていた活版印刷所がいま、街から姿を消しつつあります。
たしかに活版印刷には、大変な労力がかかります。例えば今あなたが見ているこの文章を印刷しようとすると、まずこの文字一つ一つの鉛活字を、書体・大きさにつき各数千字以上ある中から探して拾い、文字間・行間には活字より一段低い「込め物」を詰めてホワイトスペースを作り、1枚の版にして印刷機でプレスしてようやく完成、となるわけです。それに比べて現代のDTP(Desk Top Pubrishing)では、キーボードを叩くだけで、これら全ての工程がデスクトップの画面の向こうで終わってしまいます。
その圧倒的な効率の違いと同時に、どこか感じる不在感――それは「実感」「手応え」「人と人とのかかわり」といったもの。そしてそれこそが、活版印刷に宿る本質であり、失いがたい魅力といえるのではないでしょうか。
本展では、世田谷の活版印刷所から活版機材一式を譲り受け、新提案型活版工房を誕生させるまでのプロジェクトを、おびただしい量の鉛活字や使い込まれた機材とともにご紹介します。
また、活版文化を懐かしい世界だけに閉じ込めることなく、活躍中のグラフィック・デザイナーやアーティスト18名による活版を使用した作品を展示し、その現代的魅力を探ります。
【出品予定作家】
池田充宏・田中義久(COIL)、イチハラヒロコ、江藤公昭(ランドスケープ プロダクツ)、大石薫(アダナ・プレス倶楽部、Lingua Florens)、加藤賢策・草薙洋平・大西隆介(東京ピストル)、菊地敦己(bluemark)、桐島カヲル(Lingua Florens)、小山奈々子、澤辺由記子(temp press)、住吉麻衣子(乙女印刷)、高田修地・高田唯(ALL RIGHT GRAPHICS)、武井実子(SAB LETTER PRESS)、名久井直子×福永信×法貴信也 、西尾彩(citrus press)、藤原弥生(7 days cards)
- [展示]
活版再生展

活版印刷の再生をテーマに、活躍中のグラフィック・デザイナーやアーティストによる作品を展示します。
生活工房
- 会期:
- 2007年05月04日(金)~2007年05月20日(日)
- 会場:
- ワークショップB(4F) / 生活工房ギャラリー(3F)
関連イベント
「活キ活キ活版DAYS」
(1) 第2作品集出版記念「イチハラヒロコ・ミニサイン会」
出品作家のイチハラヒロコさんによる、『雨の夜にカサもささずにトレンチコートのえりを立ててバラの花を抱えて青春の影を歌いながら「悪かった。やっぱり俺、、、。」って言ってむかえに来てほしい。』(三修社より4月末発行)を記念したサイン会。
【会期】5月4日(金・祝)
【定員】当日先着50名
(2) Adana-21Jによる印刷実演
蝶番式プラテン小型活版印刷機「Adana-21J」を使って、ご来場のお客様に記念の「ウェルカムカード」を印刷していただきます。
【会期】5月7日(月)
【参加費】無料
(3) 活版セミナー「活版印刷―昨日、今日、明日」
【会期】5月12日(土)
日本活版印刷界の第一人者・高岡昌生さんに、活版のこれまでと未来について語っていただきます。お申込時に、高岡さんへのご質問をお受付いたします。
【講師】高岡昌生(嘉瑞工房)
【参加費】500円
【定員】申込先着70名
(4) 活版ツアー「活字鋳造所と印刷博物館へGo!」
活字の鋳造の様子を見学したあと、印刷博物館で活版印刷の体験をし、企画展を見学するツアーです。
【会期】5月15日(火)
【見学場所】佐々木活字、印刷博物館
【参加費】一般1000円、65歳以上200円(博物館入場料・保険料込み、会場までの交通費は各自負担)
【定員】抽選15名
(5) 活版ワークショップ「Adana-21Jでオリジナル・ミニ・カードをつくろう!」
手動式の活版印刷機「Adana-21J」を使って小さなカードを印刷する楽しい「活版印刷」のワークショップです。文字の部分は4号の明朝体活字を使用し、絵柄の部分は簡易製版機でオリジナルの樹脂凸版を作製します。
【会期】5月19日(土)
【講師】朗文堂/アダナ・プレス倶楽部
【参加費】2,000円
【定員】抽選8名
※このイベントは、世田谷文化生活情報センター 生活工房 10周年記念事業です。